倉庫作業の腰痛対策は高さとひねりで決まる|ピッキングと荷役の見直し方
「腰痛は重い荷物を扱う倉庫の仕事につきもので、持ち方さえ気をつければ何とかなる」。入社時の研修で膝を曲げて持ち上げる方法を教わると、腰を守る手段はそれで出そろったように感じるはずです。
しかし、立ち仕事や力仕事で腰を痛めた方の体を見てきた整体院CUREPROの立場から言えるのは、倉庫作業の腰痛を左右するのは持ち方の上手下手より、床から持ち上げる回数、腰をひねる回数、そして体が温まる前に重い物を扱うタイミングだ、ということです。持ち方を磨く前に、荷物の高さと体の向きの変え方から見直す順序もあります。
本記事では、ピッキングや積み込みで腰に負担が集まる場面から、高さとひねりの減らし方、国の指針が示す持ち方と重さの目安、コルセットやアシストスーツの使い方、職場に相談できること、受診を優先したいサインまで、体の構造を見る整体院の視点で順を追ってお伝えします。

倉庫作業の腰痛は重さより腰を曲げてひねる回数で起こる
倉庫作業の腰痛は、1回の重い荷物より、前かがみ、中腰、ひねりといった姿勢を1日に何度も繰り返すことで起こりやすくなります。厚生労働省の職場における腰痛予防対策指針にも、前屈、中腰、ひねりなどの不自然な姿勢をとらないことが、重さの管理とは別の項目として明記されています。倉庫の作業ごとに、腰へ負担がかかる姿勢を6つに分けると次のとおりです。
| 作業 | 腰に負担がかかる姿勢 | 起こりやすいこと |
|---|---|---|
| ピッキング(棚の下段) | 膝を伸ばしたまま上体を倒す浅い前かがみ | 軽い商品でも前かがみの回数が積み上がる |
| ピッキング(棚の上段) | 背伸びをして腰を反らす | 腰の反りと、荷を落としかける急な動き |
| 仕分けと検品 | 立ったまま左右に荷を振り分ける | 足を動かさず腰だけをひねる |
| 積み込みと積み下ろし | 床やパレットから持ち上げ、高い位置へ積む | 下から上への持ち上げで腰に大きな力がかかる |
| カゴ台車やハンドリフトの押し引き | 前に傾き、体重をかけて動き出す | 動き出しと方向転換で腰に力が集中する |
| フォークリフトやトラックの運転 | 長時間の座りっぱなしと振動 | 降りた直後の荷扱いで腰を痛めやすい |
表の中でも負担が大きいのは、下から上への持ち上げです。中央労働災害防止協会の運送業務向け腰痛予防テキストでは、平成16年の運輸交通業の腰痛を動作別に分けると、荷物を下から上へ持ち上げる動作が半数近くを占めたと分析されています。床から腰より上へ持ち上げる回数をどれだけ減らせるかが、倉庫作業の腰痛対策の中心です。
倉庫作業の腰痛対策はまず床から持ち上げる高さを減らす
倉庫作業の腰痛対策で最初に見直したいのは、荷物を持ち上げる高さの差です。腰に大きな力がかかるのは床に近い位置から持ち上げるときで、荷物が初めから腰の高さにあれば、同じ重さでも腰を深く曲げずに済みます。
- 下段の列に入ると、膝を伸ばしたまま何度もお辞儀をしている
- 床に置いた箱をいったん持ち上げてから台車に載せ直している
- 上段の荷物を、つま先立ちで手前に引き寄せている
当てはまる動きがあれば、腰の負担は持ち方ではなく高さの差から生まれています。見直す場所は、下段、床置き、上段の3つです。
下段の商品は膝をつくかしゃがんで取る
棚の下段から軽い商品を取るとき、膝を伸ばしたまま上体だけを倒す浅い前かがみになりがちです。1回の負担は小さくても、回数が重なると腰の筋肉は疲れていきます。指針にも前屈や中腰を膝を着いた姿勢に置き換える方法が示されており、下段の作業が続く列では、片膝をつくかしゃがんで目線を下げてから取ります。
膝に痛みがある方は、無理にしゃがむ必要はありません。台車を棚の近くに寄せて持ち上げる距離を短くするなど、高さの差を小さくする方法を選んでください。
床置きを減らし荷物を腰の高さで受け渡す
床に直接置いた荷物は、持ち上げるたびに腰を深く曲げる必要があります。パレットやカゴ台車、作業台の上に置いて腰の高さで受け渡せば、持ち上げる距離そのものが短くなるのです。指針の解説でも、倉庫では出し入れの多い荷物を運ぶときに抱えるのと同じ高さに置き、腰をかがめる動作を避けるよう配慮することが示されています。
肩より上の荷物は踏み台を使って体の正面で扱う
高い段の荷物を背伸びして取ると腰が反り、重さを受け止めきれずに荷を落としかけることがあります。指針では、高く積んだ荷物をできるだけ肩より上で扱わないことが示されています。高い段の荷物は踏み台で体を荷物に近づけ、胸の前で受け取ってください。踏み台は安定した床に置き、職場で決められた器具と手順で使うことが前提です。
ひねりは腰ではなく足の向きを変えて消す
荷物を持ったまま腰をひねる動作は、腰への負担が大きく、ぎっくり腰のきっかけにもなりやすい動きです。指針の解説にも、重い物を持ったまま体をねじる動作は腰への負担が極めて大きくなると明記されています。
仕分けや積み込みでは、足はそのままで上半身だけを回して荷物を渡す場面が、1日に何度も出てくるはずです。つま先を渡す先へ向けてから腕を動かすと、腰のひねりを足の向きの変化に置き換えられます。
- 荷物を受け取ったら、つま先を渡す先へ向けてから置く
- 台車と棚の間では、荷物を持ったまま振り返らず、一歩踏み出して体ごと向きを変える
- いつも同じ側へ振り分ける配置なら、立ち位置を入れ替えて左右の偏りを減らす
- 積み込みでは荷物を体の正面に置いたまま、足を運んで位置を合わせる
同じ側へのひねりを毎日繰り返すと、片側の腰だけが張る状態になりやすいと見ています。腰の痛みがいつも同じ側に出る方は、作業の中で体をどちらへ回しているかを一度振り返ってみてください。
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持ち上げ方の基本と重さの目安は国の指針に示されている
持ち上げ方の基本と重さの目安は、厚生労働省の職場における腰痛予防対策指針に具体的に示されています。持ち上げ方は次の4つの手順です。
- 荷物にできるだけ体を近づけ、重心を低くする
- 片足を少し前に出し、膝を曲げて腰を十分に下ろしてから荷物を抱える
- 呼吸を整え、下腹部に力を入れてから、膝を伸ばして立ち上がる
- 持った後は背を伸ばし、腰をひねらずに運ぶ
重さの目安は、満18歳以上の男性が人の力だけで扱う場合、体重のおおむね4割以下です。満18歳以上の女性は、さらに男性が扱える重さの6割くらいまでとされています。体重ごとに計算すると、目安は次のとおりです。
| 体重 | 男性の目安(体重のおおむね4割) | 女性の目安(男性の目安の6割くらい) |
|---|---|---|
| 50キロ | 約20キロ | 約12キロ |
| 60キロ | 約24キロ | 約14キロ |
| 70キロ | 約28キロ | 約17キロ |
表の数字は指針の割合から計算した目安で、持ち上げてよい上限の保証ではありません。同じ重さでも、扱う回数が多い日や運ぶ距離が長い作業ほど、負担は大きくなるのです。目安を超える荷物は、指針でも身長差の少ない2人以上で扱うよう示されています。
女性については、女性労働基準規則で、満18歳以上の女性が断続作業で30キロ以上、継続作業で20キロ以上の重量物を扱うことが禁止されていることも指針の解説に記されています。重さの分からない箱は、いきなり持ち上げず、少し傾けて重さを確かめてから構えてください。
倉庫作業で腰を痛めやすいのは体が切り替わった直後である
倉庫作業では、同じ荷物でも、朝の作業開始直後や休み明け、運転を終えた直後に扱うときほど腰を痛めやすくなると考えています。中央労働災害防止協会のテキストに掲載された平成16年の運輸交通業の分析でも、腰痛の発生は曜日では月曜日、時間帯では午前8時から12時にかけてが多い結果でした。
運転の直後にも注意が要ります。長時間座り続けた体は血の巡りが落ち、筋肉の力の入り方も一時的に鈍ることがあるためです。指針も、長時間車両を運転した後に重い物を扱う場合は、小休止とストレッチングをしてから作業するよう示しています。
| 切り替わりの場面 | 体の状態 | 最初にすること |
|---|---|---|
| 朝の作業開始 | 寝ていた体が温まりきっていない | 作業前の体操をしてから、軽い荷物で始める |
| 休み明け | 数日のあいだ作業の動きから離れている | 最初の1時間は重い荷物を連続させない |
| 休憩明け | 座っていた腰とお尻がこわばっている | 立って腰を軽く反らし、膝の曲げ伸ばしをしてから戻る |
| フォークリフトやトラックを降りた直後 | 座りっぱなしと振動で筋肉がこわばっている | 小休止とストレッチの後に積み下ろしへ入る |
忙しい朝ほど、いきなり重い箱に手を伸ばしたくなります。ただ、最初の数分を軽い荷物に回すだけで、構えが整わないまま腰に重さがかかる場面を減らせるはずです。持ち方を覚えることと同じくらい、いつ重い物を持つかを決めることが腰を守ります。

ピッキングや検品の立ちっぱなしは1時間ごとに区切る
ピッキングや検品のように立ち続ける作業では、同じ姿勢を長く続けないことが腰の負担を減らします。指針は立ち作業について、おおむね1時間に1、2回程度の小休止をとり、下肢の屈伸運動などを行うことが望ましいとしています。
- 片足を低い台や棚の下段に交互に乗せ、腰の反りをゆるめる
- 硬いコンクリートの床では、クッション性のある靴や職場のマットを使う
- 小休止では膝の曲げ伸ばしとつま先立ちで、ふくらはぎを動かす
- 検品のように同じ向きで立ち続ける作業は、歩く作業と交互に組み合わせる
ピッキングで足の裏やふくらはぎが痛む場合も、背景には同じ立ちっぱなしと歩き続けがあります。靴底が硬すぎたり薄すぎたりすると床からの衝撃が腰まで伝わりやすいため、靴の見直しは足と腰の両方の対策です。立ち作業全般の腰痛の仕組みは立ち仕事の腰痛対策で詳しく扱っています。
コルセットとアシストスーツは一律に頼らず使う場面を決める
コルセットや腰部保護ベルトは、全員が一律に着けるものではなく、人ごとに効果を確かめてから使うかどうかを決めるものです。指針の解説には、腰痛があるときに着けると外した後に腰痛が強まることがあることや、女性が幅の広い治療用コルセットを使うと骨盤の底への負担が増す場合があることも記されています。
| 道具 | 向いている使い方 | 注意すること |
|---|---|---|
| 腰部保護ベルトやコルセット | 重い荷物を扱う時間帯に絞って着ける | 着けっぱなしにしない。効果は人によって違う |
| アシストスーツ | 持ち上げや中腰が続く作業で職場が導入する | 体に合わせた調整と、使い方の教育が前提 |
アシストスーツは種類によって補助する動きが違うため、個人で買って持ち込むより、職場として作業に合うものを選ぶ道具です。ベルトを着けないと働けないほど痛む状態は、道具で支える段階を過ぎているため、産業医や整形外科医に相談してください。
倉庫作業の腰痛は職場に相談してよい課題である
倉庫作業の腰痛予防は、働く人の心がけだけでなく、事業者が取り組む課題として国の指針に位置づけられています。指針は事業者に向けて、台車やコンベヤーによる省力化、荷物の重さの表示、目安を超える荷物の2人作業、作業台や荷物の配置への配慮などを求めています。
- 重さの分からない荷物に、重量を表示してほしい
- 床置きの荷物を、台車やパレットの上に置く運用にしてほしい
- 目安を超える荷物は、2人で扱う決まりにしてほしい
- 重量物を常に扱う作業に就く人として、腰痛の健康診断を受けたい
重量物を扱う作業に常に就く人には、配置の際とその後6か月以内ごとに1回、医師による腰痛の健康診断を行うことも指針に示されています。派遣で働いている場合は、派遣先の責任者に加えて派遣元の担当者にも伝えておくと、話が進みやすいはずです。作業の設計を変える考え方は、調理師の腰痛対策や介護士の腰痛対策とも共通しています。
仕事中に腰を痛めたときは、日時と状況を職場に報告し、記録を残してください。業務による腰痛として補償の対象になるかどうかには認定の基準があり、判断は労働基準監督署が行います。
腰や脚にこのサインがあれば作業より受診を優先する
腰痛の多くは筋肉や関節の疲れによるものですが、神経の圧迫や腰以外の病気が隠れていることもあります。次のサインがあるときは、作業を続けず医療機関を受診してください。
| サイン | 行動 |
|---|---|
| お尻から脚にしびれや痛みが広がる | 腰の神経が圧迫されている可能性があるため、整形外科で確かめる |
| 足に力が入りにくい、つま先立ちやかかと歩きがしにくい | 神経の症状が強い可能性があるため、早めに整形外科を受診する |
| 尿や便が出にくい、出た感覚がおかしい | 急いで医療機関を受診する |
| 横になっても痛みが楽にならない、発熱や理由のない体重減少がある | 腰以外の病気も含めて調べるため、早めに受診する |
| 荷物を落とした、転んだなどの後から強く痛む | 骨や靭帯のけがを確かめるため、整形外科を受診する |
持ち上げた瞬間にぎくっとなり動けなくなったときは、無理に作業へ戻らず、横向きで膝を曲げた楽な姿勢で休み、職場に連絡してください。急な腰の痛みについてはぎっくり腰とぎっくり腰の前兆サインで、病院と整体の使い分けは腰痛は病院か整体かで扱っています。
よくある質問
倉庫作業の腰痛について、働き始めの方から出やすい疑問を4つまとめました。
入って間もない時期の腰の痛みは筋肉痛ですか
筋肉痛のこともあります。慣れない動きで筋肉が疲れた痛みなら数日のうちに和らいでいくことが多く、腰だけでなく太ももやお尻にも張りが出ます。数日たっても腰だけが強く痛む、脚にしびれが広がるといった場合は、筋肉痛と決めつけずに受診してください。
腰が痛いときは仕事を休んだほうがよいですか
痛みの強さで変わります。動けないほどの痛みや受診のサインがあるときは、休んで医療機関で確かめてください。中央労働災害防止協会のテキストでは、ぎっくり腰で動けない状態を抜けたら普段の活動を保つよう努めることが勧められており、軽い痛みなら重い荷物を避ける配置を相談しながら働く選択もあります。
腰痛を防ぐには筋トレをしたほうがよいですか
無理のない範囲なら役立ちます。指針でも、全身運動や筋力を高める運動は、腰痛などの状態を考えて無理のない範囲で行うとよいとされています。ただ、筋力をつけても床からの持ち上げやひねりの回数が変わらなければ負担は残るため、作業の見直しと組み合わせてください。体幹の深い筋肉の鍛え方は腰痛改善のためのインナーマッスルの鍛え方で紹介しています。
作業前の体操はやったほうがよいですか
取り入れる価値のある習慣です。指針は重量物を扱う作業に常に就く人に対し、作業開始前や作業中、作業後に腰痛予防体操を行うことを求めています。反動をつけず、痛みのない範囲で20秒から30秒ゆっくり伸ばす静的なストレッチングが推奨されています。
体の使い方や姿勢の悩みを、プロに相談してみませんか?
まとめ|倉庫作業の腰痛対策は高さとひねりと体の切り替えで守る
倉庫作業の腰痛は、重さそのものより、床から持ち上げる回数、腰をひねる回数、体が切り替わった直後の荷扱いで大きくなります。荷物を腰の高さで受け渡し、足で向きを変え、朝一や運転の直後は軽い荷物から始めてください。持ち方の基本と重さの目安は国の指針が示しており、設備や決まりに関わることは職場へ相談してよい課題です。
整体院CUREPROは、腰痛を腰だけの問題とせず、しゃがむときの股関節や足首の動き、骨盤の傾きといった、持ち上げる動作を支える土台から確かめています。施術の考え方はCUREPROの整体とはで、腰痛への考え方は腰痛のページでご覧いただけます。指針どおりに膝を曲げようとしても深くしゃがめない、同じ側の腰ばかり張るという方は、倉庫での作業姿勢を再現しながら、どこが動いていないかを一緒に確かめましょう。
運営者情報
本記事は、整体院CUREPRO(運営:株式会社May-Plus)が作成しました。株式会社May-Plus代表の阿部純治は柔道整復師(国家資格)です。記事の内容は一般的な情報提供を目的としたもので、診断や治療に代わるものではありません。痛みやしびれが続く場合は医療機関にご相談ください。
監修者プロフィール:阿部純治(柔道整復師)