授乳中の肩こりと姿勢の関係|体で支えず道具に支えさせる整え方
▼この記事の監修者
阿部純治(あべ じゅんじ)
柔道整復師(国家資格)/CUREPROグループ代表
中央医療学園専門学校(現:日本総合医療専門学校)卒業。整形外科クリニック・大手整骨院グループ等での勤務経験を経て、2011年創業。施術歴20年、延べ5万人以上の施術実績。骨盤と下半身の構造改善を得意とする。
「授乳が終わるころには、首も肩もガチガチ。背筋を伸ばそうと意識しているのに、なぜか楽にならない」。授乳と肩こりと姿勢を一緒に調べている方から、この話をよく聞きます。正しい姿勢を教わって実践しているのに、つらさが減らない。おかしいと感じるのは当然でしょう。
産後の方の体を見てきた立場から申し上げると、授乳中の肩こりは姿勢が崩れているから起きるとは限りません。その姿勢を自分の筋力で保ち続けているから起きている場合が多いのです。必要なのは正しい形を作ることより、形を保つ仕事を体から道具へ渡すことだと考えています。
本記事では、授乳と肩こりと姿勢の関係を、力が入る仕組みからクッションや椅子の合わせ方、10分後も崩れないかの確認法、授乳後のリセットまで、施術者の視点で順を追ってお伝えします。
この記事でわかること
- 授乳中の肩こりが起きる仕組みと、姿勢を意識するほど力が入る理由
- 授乳クッション、背もたれ、足台の高さの合わせ方
- 10分後に崩れないかで判断する確認法と、左右交互の使い分け
- 授乳後30秒でできるリセットと、医療機関へ相談する目安
授乳の肩こりは姿勢を自力で保っているから起きる

結論から申し上げます。授乳の姿勢そのものより問題なのは、その形を10分から20分、筋肉の力だけで支え続けていることです。
授乳は1日に何度も繰り返されます。1回15分としても、回数を重ねれば1日で数時間になります。その間ずっと、赤ちゃんの重さを腕で保ち、頭をやや前へ倒し、肩をわずかに上げた形が続く。動きのない持久戦です。
厚生労働省の授乳・離乳の支援ガイドでも、産後は妊娠や出産による変化が回復していく期間であり、心身の不調を抱えていることが想定されると述べられています。回復の途中にある体で、休みのない持久戦に入っている。条件は不利です。
加えて、産後は睡眠がまとまって取れません。筋肉の緊張は休息中にゆるむものですから、細切れの睡眠が続けばこりは翌日へ持ち越されます。胸が張っている時期は、その重さも肩と背中が受けとめています。使う量が増えている一方で、回復にあてる時間は減っている。肩こりが産後に集中する理由は、この差にあると見ています。
| 整える順番 | 内容 |
|---|---|
| ①高さを作る | クッションで赤ちゃんを乳首の高さまで持ち上げる |
| ②背中を預ける | 背もたれとすき間を埋めるクッション |
| ③足を着ける | 足裏が床につく高さ。届かなければ足台 |
| ④肘を置く | 肘掛けやたたんだタオルで腕の重さを逃がす |
| ⑤10分後を確認 | 始めた形が保てているかを見る |
正しい姿勢を意識するほど肩に力が入る

ここで視点を反転させましょう。背筋を伸ばす、胸を張るという意識は、悪いことではありません。ただ、授乳の場面では裏目に出ることがあります。
背筋を伸ばそうとするとき、多くの方は肩を後ろへ引き、わずかに持ち上げます。その状態で赤ちゃんを支えれば、肩の力は抜けません。姿勢を保つために力を入れているのだから、こりが減らないのは当たり前だと言えます。
目指したいのは、力を入れて作った正しい形ではなく、力を抜いても崩れない形です。そのためには、支える仕事を体の外へ移す必要があります。
もう一つ、意識だけでは続かない理由があります。授乳中は眠く、片手はふさがり、赤ちゃんの様子も見ています。姿勢に注意を向け続けられる余裕は、そもそもありません。
支える仕事をクッションと椅子に渡す

ここまでの整理を、実際の配置に落とし込みます。
クッションの高さは腕を下ろしても届く位置まで上げる
授乳クッションは、赤ちゃんを乗せる台です。腕で高さを作るのではなく、クッションで乳首の高さまで持ち上げてください。1つで足りなければ、バスタオルをたたんで重ねます。腕の力を抜いても赤ちゃんの位置が変わらない高さが、合っている高さです。
柔らかすぎるクッションは、体重で沈んで高さが足りなくなります。授乳の途中で赤ちゃんが下がってくる場合は、下に硬めのものを一枚足してみてください。
背もたれには背中全体を預ける
浅く腰かけて背中が浮いていると、上半身を自分で支えることになります。お尻を背もたれまで引き、腰と背もたれのすき間にクッションを入れて、背中全体を預けてください。ソファは沈み込んで骨盤が後ろへ倒れやすいため、背中側にクッションを足すと安定します。
足裏は床につけるか足台を使う
足が浮いていると、太ももに力が入り、骨盤も安定しません。足裏全体が床につく高さに座り、届かない場合は足台を置いてください。厚めの本を重ねるだけでも代用できます。膝がやや高くなる位置だと、クッションが安定して赤ちゃんを支えやすくなります。
肘は必ずどこかに置く
ここが最も見落とされているところです。腕の重さは、片腕でおよそ体重の6パーセント前後とされます。
赤ちゃんの重さに加えて、自分の腕の重さも肩が支えているわけです。肘掛けのある椅子を使う、たたんだタオルを肘の下に置く、クッションの端に肘を載せる。
どれでも構いません。肘が置ければ、肩の仕事は目に見えて減ります。
片方の肘だけ置ける状態でも、置けないよりは楽になります。左右で条件が違う場合は、置けないほうの授乳を短めに切り上げる工夫もあるでしょう。
体の使い方や姿勢の悩みを、プロに相談してみませんか?
赤ちゃんを胸に近づける形が10分後も保てるかで判断する

ここで、施術の現場に立ってきた立場から本音を申し上げます。授乳指導では、赤ちゃんを胸に近づけましょうと教わります。正しい考え方です。ただ、現場で起きているのは逆のことだと感じています。
疲れてくると、人は胸のほうを赤ちゃんに近づけます。背中を丸め、首を前に倒し、覗き込む形です。最初は正しい姿勢で始めても、10分経つと戻っている。比較記事ではほとんど語られませんが、授乳の肩こりを分けるのは開始時の姿勢ではなく、10分後の姿勢です。
だからこそ、確認するタイミングを変えてください。授乳を始めた直後ではなく、10分ほど経ったところで一度、自分の状態を点検します。
- あごが胸に近づいていないか。首が前に倒れていないか
- 背中が背もたれから浮いていないか
- 肩が上がっていないか。耳と肩が近づいていないか
- 赤ちゃんが下がってきていないか
崩れていたら、姿勢を直すのではなく高さを足してください。クッションを1枚足す、肘の下にタオルを入れる。意志で戻すのではなく、条件を変えるほうが続きます。
左右交互と姿勢のバリエーションで偏りを減らす

同じ側、同じ形で繰り返すと、首の向きと肩の高さに偏りが生まれるのです。左右を交互に使うことは、量を減らせない中で偏りだけを減らす方法です。
| 授乳の形 | 体への向き不向き |
|---|---|
| 横抱き | 基本の形。クッションの高さが不足すると腕で補いやすい |
| 交差横抱き | 頭を支えやすい。反対の腕に負担が寄りやすい |
| 脇に抱える形 | 胸を覗き込みにくく、首の前倒しが減る |
| 縦抱き | 首がすわってから。赤ちゃんのお尻を面で支える |
| 横になっての授乳 | 首肩の負担は小さい。安全面の配慮が必要 |
首の向きにも偏りが出ます。右側で授乳するときは左を向き、左側では右を向く。片側ばかりが続けば、向きにくいほうができてきます。授乳のたびに左右を入れ替えるのが難しければ、1日の中で回数が同じになるよう意識するだけでも違うでしょう。
床にあぐらで座る場合は、お尻の下に座布団を二つ折りにして敷いてください。骨盤が後ろへ倒れにくくなり、背中の丸まりが減ります。クッションがない場面では、たたんだ毛布やバッグでも代用できます。
横になっての授乳は首肩の負担が小さい一方、寝てしまうと赤ちゃんの安全に関わります。眠気が強い時間帯は避けるなど、条件を決めておくほうが安心でしょう。
授乳後30秒でできるリセットを習慣にする

まとまった運動の時間は取れません。だからこそ、授乳の終わりに区切りをつくるほうが続きます。
授乳が終わったら、赤ちゃんを置いたあと30秒だけ次の動きを入れてください。
- 肩をすくめて3秒、そのままストンと落とす。5回繰り返す
- 両手を後ろで軽く組み、胸を開いて深呼吸を3回
- あごを軽く引き、首の後ろを伸ばして10秒
ストレッチは反動をつけず、呼吸を止めないことが原則とされています(厚生労働省の健康情報サイト(イーヘルスネット)「ストレッチングの実際」)。強く伸ばすほど効くわけではありません。回数を重ねられる短さのほうが、産後の生活には合っています。
入浴できる日は、湯船で肩まで温めてください。難しい日はシャワーを首の後ろに当てるだけでも違います。肩こりそのものの背景を知りたい方は、肩こりの原因と解消法もあわせてご覧ください。
体の使い方や姿勢の悩みを、プロに相談してみませんか?
姿勢を整えても変わらないときに考えること

線引きははっきりさせておきましょう。高さを足し、リセットを続けても2週間から4週間で変化がないのであれば、姿勢以外の要因も見ていく段階です。
睡眠がまとまって取れない、抱っこひもの調整が合っていない、寝かしつけの姿勢が固定されている。授乳以外の場面が負担の中心になっている場合もあります。
たとえば寝かしつけでは、抱いたまま同じ姿勢で立ち続ける、あるいは添い寝で腕を伸ばしたまま固まるという形が続きます。授乳より長い時間、同じ形を保っている方は少なくありません。
背中や肩甲骨まわりのつらさが強い方は、肩甲骨が痛む原因で背景を確認してみてください。
そして、次のような状態があるときは、セルフケアより受診を優先してください。
- 腕や手がしびれる。感覚が鈍い
- 腕に力が入らない。物を落とすことが増えた
- これまでにない強い頭痛がある。吐き気を伴う
- 発熱がある。胸に熱を持った硬いしこりがある
- 胸の痛みや息苦しさがある
- 肩が上がらない。動かすと鋭い痛みが走る
とりわけ、胸の痛みや息苦しさは産後に注意したい症状です。肩こりのせいと考えず、速やかに医療機関へご連絡ください。発熱と胸のしこりが重なる場合は、産婦人科や母乳外来へのご相談が先になります。
授乳中の肩こりと姿勢についてよくある質問

肩こりは母乳の出に影響しますか
直接の因果を断定できる根拠は確認できていません。ただ、痛みが強いと姿勢を変えにくくなり、授乳そのものがつらくなります。母乳の量や飲ませ方については、助産師や母乳外来にご相談ください。
授乳クッションがない場合はどうすればよいですか
バスタオルを数枚重ねて丸めるか、掛け布団をたたんで代用できます。大切なのは専用品かどうかではなく、腕の力を抜いても赤ちゃんの高さが保てるかどうかです。
抱っこひもでも肩がこるのはなぜですか
肩ベルトだけで支えていると、重さが肩に集中します。腰ベルトを骨盤の位置でしっかり締め、赤ちゃんを体に密着させてください。装着後に肩ベルトを一度ゆるめ、腰で支える感覚を確かめると調整しやすくなります。
体がバキバキで自分ではほぐせないときはどうすればよいですか
強く押すほどよいわけではありません。硬く感じる場所は、支え続けて疲れている場所でもあります。まずは支え方を変え、そのうえで温めることから始めてください。姿勢のクセそのものが気になる方は、猫背の原因と改善も参考になります。
授乳が終われば肩こりも落ち着きますか
授乳の回数が減れば負担は下がります。ただ、その頃には抱っこの重さが増え、離乳食や後追いで前かがみになる場面も増えていきます。授乳期が終わるのを待つより、支え方を変えて今の負担を下げるほうが現実的でしょう。
産後どのくらいから体のケアを受けられますか
1か月健診で問題がないと確認できてからが目安です。帝王切開の場合は主治医の判断を優先してください。詳しい時期の考え方は産後の骨盤ケアで整理しています。
まとめ|授乳の肩こりは姿勢を作るより支えを足して減らす
授乳中の肩こりで最初に変えるのは、背筋を伸ばす意識ではありません。クッションで赤ちゃんを乳首の高さまで持ち上げ、背中を背もたれに預け、足裏を床につけ、肘をどこかに置く。支える仕事を体の外へ渡すことが土台です。
そして、確認するのは10分後です。崩れていたら姿勢を直すのではなく、高さを足してください。意志ではなく条件を変えるほうが続きます。
それでも変化がなく、しびれや力の入りにくさ、強い頭痛、発熱、胸の痛みや息苦しさがあるときは、医療機関へご相談ください。
CUREPROは完全自費で、痛む場所だけでなく体全体のつながりから構造を整える整体院です。産後のご相談では、授乳の回数と姿勢、お使いのクッションの状態まで伺ったうえで、首と肩に加えて座ったときの骨盤の向きと胸まわりの動きを確認し、支え方の見直しとセルフケアの優先順位をお伝えしています。
姿勢を意識しても楽にならなかった方こそ、支えの位置から見直してみてください。東京・埼玉・千葉の10院でお待ちしています。
この記事の監修者
阿部純治(あべ じゅんじ)
柔道整復師(国家資格)/CUREPROグループ代表
中央医療学園専門学校(現:日本総合医療専門学校)卒業。整形外科クリニック・大手整骨院グループ等での勤務経験を経て、2011年創業。施術歴20年、延べ5万人以上の施術実績。骨盤と下半身の構造改善を得意とする。