座ったまま肩甲骨ストレッチ|肩こりに効く6種と1分の習慣
▼この記事の監修者
阿部純治(あべ じゅんじ)
柔道整復師(国家資格)/CUREPROグループ代表
中央医療学園専門学校(現:日本総合医療専門学校)卒業。整形外科クリニック・大手整骨院グループ等での勤務経験を経て、2011年創業。施術歴20年、延べ5万人以上の施術実績。骨盤矯正と下半身の構造改善を得意とする。
肩こりには肩甲骨を動かすのが良い、とよく聞きます。けれど、床に寝て行うストレッチはオフィスでは無理だし、大きく腕を振り回す体操も人目が気になる。結局、肩を自分でもんで終わってしまう。そんな方のために、椅子に座ったままできる肩甲骨ストレッチだけを集めました。
紹介するのは6種。どれも座ったまま、狭いスペースでできて、1種目30秒前後で終わります。
忙しい日は、このうち2種を組み合わせた約1分のルーティンだけでも構いません。そして種目の前に、なぜ肩そのものではなく肩甲骨を動かすと肩こりが楽になるのか、という理由からお話しします。
理由が分かると、同じ動きでも効かせ方が変わるからです。
解説するのは、整体院を10院運営する柔道整復師です。デスクワークの合間に動かしたい方はもちろん、立って行う体操に不安がある年配の方にも、座ったままの種目は安全な選択肢になります。
なぜ肩甲骨を動かすと肩こりに効くのか

肩甲骨は、少し変わった骨です。背中の左右にある三角形の板状の骨ですが、背骨や肋骨と関節でがっちり連結されておらず、肋骨の上を筋肉に包まれて滑るように動きます。
いわば、体幹の上に浮かんでいる骨です。浮かんでいるからこそ、腕を大きく自由に動かせる。
その代わり、動かさなければ周囲の筋肉ごと固まり、引き戸が錆びつくように滑りが悪くなっていきます。
デスクワーク中、腕は体の前に固定され、肩甲骨は外側へ開いた位置に貼り付いたままになります。肩甲骨につながる僧帽筋や菱形筋といった筋肉は、開いた位置で引き伸ばされたまま働き続け、血流が滞り、こりへ変わっていく。
つまり、肩の上の張りは結果であって、肩甲骨が動かない時間こそが土台にあります。肩をもむのは結果への対処、肩甲骨を動かすのは土台への対処。
肩甲骨のストレッチが肩こりに効くと言われる理由は、貼り付いた肩甲骨の滑りを取り戻し、周囲の筋肉に伸び縮みというポンプ運動をさせて血流を回すことにあります。厚生労働省のe-ヘルスネットも、ストレッチングを続けることで柔軟性が高まり、筋の緊張がやわらぐことを効果として挙げています。
肩甲骨の構造と動きは肩甲骨の役割と動きの解説で詳しく紹介しています。
肩や首の張りとセットで、頭の重さや締めつけられるような頭の鈍さを感じる方もいるでしょう。首から肩の緊張に伴って頭の重だるさが出ることは珍しくなく、肩甲骨まわりをゆるめると頭も軽く感じられる、という声は現場でもよく聞きます。
ただし、経験のない強い頭痛、ズキズキと脈打ち動くと悪化する頭痛、吐き気を伴う頭痛は、こり由来と自己判断せず受診を優先してください。動かして対処してよいのは、あくまで張りに伴う重さの範囲です。
動かす方向も知っておきましょう。肩甲骨は、上げる・下げる・背骨に寄せる・外に開く・回す、と多方向に動けます。デスクワークで失われがちなのは、下げる・寄せる・回すの3方向。これから紹介する種目は、この失われた方向を取り戻すように組んであります。
座ったままできる肩甲骨ストレッチ6種

椅子に浅めに腰かけ、足の裏を床につけた姿勢から始めます。全種目やれば約4分、時間がなければ後述の1分ルーティンだけでも効果はあります。
| 種目 | やり方 | ねらい |
|---|---|---|
| ①肩甲骨の上げ下げ | 両肩を耳へ近づけて2秒、そこから肩甲骨ごと真下へ引き下げて5秒。5回 | 下げる方向の再学習 |
| ②肘で大きな円 | 指先を肩に軽く当て、肘で大きな円を後ろ回しに10回 | 回す方向・滑りの回復 |
| ③開く→寄せるの往復 | 両手を組んで前へ伸ばし背中を丸めて5秒、手をほどき胸を開いて肩甲骨を背骨へ寄せて5秒。5往復 | 開くと寄せるの往復で血流ポンプ |
| ④後ろ手の胸開き | 体の後ろで手を組み、肩甲骨を下げながら胸を斜め上へ開いて20秒 | 寄せる+下げるの複合 |
| ⑤タオル背中洗い | タオルを背中で縦に持ち(上の手と下の手)、洗う要領で上下にゆっくり10回。左右を替える | 回す方向の仕上げ・左右差の確認 |
| ⑥壁の胸開き | 立てる場合のみ。壁に手のひらを当て、体を反対へゆっくり開いて20秒。左右 | 胸の前側を伸ばし肩甲骨の環境を整える |
効かせるコツを3つ補足します。1つ目は、腕ではなく肩甲骨から動かす意識です。
②の円を描く種目なら、肘で円を描くというより、背中の肩甲骨で円を描き、その結果として肘が回る、という順番をイメージしてください。動きの主役を背中に置くだけで、同じ回数でも背中の温まり方が変わります。
2つ目は、③の往復で「開く」を省略しないこと。寄せる動きだけを繰り返すより、いったんしっかり開いてから寄せるほうが、筋肉の伸び縮みの幅が大きくなり、ポンプとして働きます。
3つ目は、呼吸です。開くときに吐き、寄せるときに吸う。
反動をつけず、痛みのない範囲で行うのは、他のストレッチと共通の原則です。なお⑥は唯一立って行う種目なので、席を立てない状況では、④の後ろ手の胸開きが座位での代わりになります。
人目が気になるオフィスでは、①③④はデスクに向かったままでもほとんど目立ちません。
時間がない日は、②の後ろ回し10回と③の往復5回だけ。これで約1分です。
1分でも、貼り付いていた肩甲骨に「今日も動ける」ことを思い出させる価値があります。1時間に1回この1分をはさめる日は、夕方の肩の重さがはっきり変わるはずです。
習慣化のコツは、時計ではなく行動にひもづけること。メールを送ったら②、会議が終わったら③、印刷物を取りに立ったら⑥。
すでにある行動の直後に置くと、意志の力に頼らず続きます。
種目には2つの性格があることも知っておくと便利です。②や③⑤のようにリズミカルに動かす種目は、関節の滑りと血流を呼び覚ます準備運動の性格。
④⑥のように一定時間止めて伸ばす種目は、縮こまった筋肉をじっくり伸ばす静的ストレッチの性格です。e-ヘルスネットのストレッチングの実際でも、静的に伸ばす場合は反動をつけず、痛みのない範囲で20秒以上かけ、呼吸を止めないことが基本とされています。
日中のすき間には動かす系を、就寝前や入浴後には伸ばす系を。性格で使い分けると、同じ6種でも一日の中での役割がはっきりします。
「肩甲骨はがし」を自分でやりたい方へ

肩甲骨まわりを検索すると必ず出会うのが、肩甲骨はがしという言葉です。はがすという響きから、誰かに肩甲骨の内側へ指を入れてもらう特別な施術を想像するかもしれません。
ただ、その本質は「貼り付いた肩甲骨の滑りを取り戻すこと」であり、実は自分で肩甲骨を多方向へ動かすことこそ、最も安全で確実なはがしです。今日紹介した6種は、いずれも座ったままできる自分はがしだと考えてください。
特に③の開く→寄せる往復と⑤のタオル背中洗いは、肩甲骨の内側の筋肉(菱形筋)と滑りに直接働きかける、はがしの中核になる動きです。床で行う種目や、より詳しい手順を知りたい方は肩甲骨はがしのやり方で全体像を解説しているので、そちらへ進んでください。
なお、他人に肩甲骨の内側へ強く指を入れてもらう行為は、痛みや揉み返しのリスクがあるうえ、自分の筋肉が縮む反射を招きやすく、お勧めしません。はがしは、外から力ずくで行うものではなく、内から動きで取り戻すものです。
動かし始めに肩甲骨のあたりでゴリゴリ、ジャリジャリと音がする方もいるでしょう。痛みを伴わない音は、硬くなった筋肉の上を肩甲骨が滑る際の摩擦音であることが多く、続けるうちに小さくなっていくのが一般的な経過です。
音を消そうと強く速く回すのは逆効果なので、ゆっくり大きく、が原則。ただし、音と同時に鋭い痛みが出る、音のする側だけ動きが明らかに悪化していく場合は、次の章の受診サインに照らしてください。
家族の肩をもんであげたい、という方にも一言。強くもむより、相手に③の開く→寄せる往復をしてもらいながら、寄せたときに肩甲骨の内側を手のひらで軽く押さえて「ここに寄せる」と場所を教えてあげるほうが、その場の気持ちよさと後に残る効果の両方で勝ります。人の手は、力を加える道具としてより、動かす場所を教える道具として使うのが、家庭でのいちばん安全な活かし方です。
年配の方、体が硬い方、左右差がある方へ

座ったまま行える種目は、立位の体操でふらつきが心配な年配の方にも向いています。椅子は背もたれと肘掛けのある安定したものを選び、キャスター付きの椅子は避けてください。
回数や秒数は目安なので、半分から始めて構いません。とくに⑤のタオル種目は、下の手を無理に上げようとせず、タオルの長さに仕事をさせるのがコツです。
五十肩などで腕を後ろに回すと痛む方は、痛みをこらえて行わず、③の往復と①の上げ下げだけにとどめてください。
右だけ、左だけがこるという方は、⑤のタオル種目で左右を比べてみてください。上にする手を入れ替えたとき、動かしにくい側があれば、そちらの肩甲骨の滑りが落ちています。
硬い側を1セット多めに行うのが基本ですが、左右差の背景には、バッグをいつも同じ肩に掛ける、片肘をついて作業する、マウス操作で片腕だけ前に出続けるといった生活の偏りが隠れています。種目と同時に、偏りの元にも目を向けると戻りにくくなります。
体が硬くて種目の形が作れないという方は、温めてから行うと変わります。入浴後や、蒸しタオルを肩甲骨の間に数分当てたあとは、筋肉の伸びが良くなり、同じ種目でも届く範囲が広がります。
冷えたオフィスで日中に行う場合も、まず①の上げ下げで軽く血流を起こしてから③④へ進む順番にすると、硬い体でも入りやすくなります。形の完成度より、昨日の自分より動いたかどうかを基準にしてください。
なお、肩まわりの緊張がゆるむと呼吸が深くなり、気持ちが落ち着く感覚を持つ方は多くいます。ストレッチの際にゆっくり息を吐くことはお勧めしますが、めまいや動悸、不眠といった不調そのものを肩こりのせいと自己判断して、ストレッチだけで対処し続けるのは避けてください。そうした症状が続くなら、医療機関で相談する道を先に確保するのが安全です。
やってはいけないことと、受診を考えるサイン

肩甲骨まわりは比較的安全にストレッチできる部位ですが、線引きは知っておいてください。まず、痛みをこらえて行わないこと。
とくに腕を上げる・後ろに回す動きで肩の関節に鋭い痛みが走る場合、それはこりではなく四十肩・五十肩や腱板の問題など、肩関節側の話かもしれません。その場合はストレッチで動かすほど悪化することがあるため、肩の痛みの原因を確認し、整形外科で診てもらってから再開するのが順番です。
次のサインがある場合も、セルフケアより受診を優先してください。夜眠れないほど肩が痛む。
腕や手のしびれを伴う。動きと関係なく背中や肩が痛み続ける。
発熱や胸の圧迫感を伴う。転倒後から痛い。
いずれも、筋肉のこり以外の原因を確かめるべき状態です。また、医療機関で肩のリハビリテーションを受けている方は、自己流の種目を足す前に、担当の理学療法士や医師に確認してください。
リハビリは診断に基づいて設計されており、この記事の一般的な種目より優先されるべきものです。
続けても肩こりが戻るなら、肩甲骨の環境を疑う
1分ルーティンを数週間続ければ、多くの方は肩まわりの軽さを感じ始めます。それでも数日で元に戻ってしまう場合、肩甲骨を貼り付かせている環境と姿勢が残っているサインです。
頭が前に出て背中が丸まる姿勢は、肩甲骨を外へ開いた位置に固定し続けます。机と画面の位置、猫背のクセ、そして肩こり全体の原因については肩こりの原因と解消の考え方で扱っているので、種目と並行して見直してください。
期間の目安も添えておきます。動かした直後の軽さは初日から感じられますが、それは一時的な血流の変化です。
夕方の肩の重さが底上げされる変化は2〜3週間、姿勢そのものの変化は月単位の話になります。即効の軽さを励みにしながら、評価は数週間の単位で行う。
この時間感覚を持っておくと、「効いていないのでは」という早すぎる見切りを避けられます。
CUREPROは、動かない肩甲骨を単独の問題ではなく、頭の位置・背骨のカーブ・骨盤まで含めた姿勢全体の結果として捉え、構造から整えていく完全自費の整体院です。初回のカウンセリングで肩甲骨の動きと姿勢を検査し、あなたの肩甲骨を貼り付かせている大元を特定したうえで、施術とセルフケアの見通しをご説明します。
自分で動かしても追いつかない肩の重さにお悩みの方は、お近くのCUREPROでご相談ください。座ったままの1分と、体の設計の見直し。
この両輪で、肩こりに戻り道を作らせないところまで進めましょう。
▼この記事の監修者
阿部純治(あべ じゅんじ)
柔道整復師(国家資格)/CUREPROグループ代表
中央医療学園専門学校(現:日本総合医療専門学校)卒業。整形外科クリニック・大手整骨院グループ等での勤務経験を経て、2011年創業。施術歴20年、延べ5万人以上の施術実績。骨盤矯正と下半身の構造改善を得意とする。