歯科医師の首こりは診療姿勢の組み立て方で変わる|患者の頭位と椅子の高さ
「首こりは歯科医師の職業病だから、うまく付き合っていくしかない」。先輩も同僚も首や肩を押さえながら診療を続けているため、首の痛みは経験年数とともに増えるものだと受け止めている先生が多いはずです。
しかし、これまで東京・埼玉・千葉の10院で、首や肩の慢性的な痛みに悩む多くの方の体と仕事中の姿勢を見てきたCUREPROの立場から言えるのは、歯科医師の首こりは首の強さよりも、術野を見る角度を首で作っているか、チェアと患者さんの頭の位置で作っているかで負担が大きく変わる、ということです。ストレッチやマッサージは、診療姿勢の組み立てを見直した後に足しても遅くありません。
本記事では、首こりを招く診療姿勢の崩れ方から、チェアと患者の頭位の決め方、診療の合間のリセット、首より先に見直したい胸郭と肩甲骨、受診を優先すべきしびれの目安まで、慢性痛を扱う整体院の視点で順を追ってお伝えします。

歯科医師の首こりは頭を前に傾けたまま止まる時間の長さで起きやすい
歯科医師の首こりが起きやすいのは、頭を前に傾けて口腔内をのぞき込んだ姿勢のまま、処置のあいだ体をほとんど動かさずに止まるからです。月刊『日本歯科評論』編集部の記事でも、歯科診療では背中をねじって丸め、首を傾けた姿勢が長く続くことが、筋肉や関節への負担になると説明されています。
頭が体の前へ出るほど、首の後ろの筋肉は頭が倒れないよう縮み続けます。歩くときのように筋肉が伸び縮みを繰り返す動きと違い、同じ長さで力を出し続ける状態では血流が滞りやすく、処置が終わって顔を上げたときに首の重さとして表れると見ています。部位ごとに起きていることは次のとおりです。
| 部位 | 診療中に起きていること | 出やすい症状 |
|---|---|---|
| 首の後ろ | 前に倒れた頭を支え続ける | 首の張り、後頭部の重さ、夕方の頭痛 |
| 肩甲骨の内側 | 丸まった背中で腕を前に保ち続ける | 肩甲骨の間の痛み、深呼吸での詰まり感 |
| 利き手側の肩 | 器具を持つ腕を浮かせたまま止める | 片側だけの肩こり、腕のだるさ |
| 腰 | 前かがみや体のねじれを骨盤で受け止める | 診療後半の腰の張り、立ち上がりの痛み |
首こりを招く診療姿勢は3つの崩れに分けられる
首こりを招く診療姿勢の崩れは、術野をのぞき込む前傾、患者側へ上半身をねじる回旋、利き手側の肩を上げたまま止める静止の3つに分けられます。多くの先生は3つが重なっていますが、どれの比重が大きいかで見直す場所が変わります。
術野をのぞき込む前傾
前傾の崩れは、患者さんの口の位置が低いか遠いときに、術者が頭を下げて距離を詰めることで起きます。首の後ろ全体が張る、うつむいた姿勢から顔を上げるときに首が痛むという先生は、この崩れの比重が大きいと考えられます。
患者側へ上半身をねじる回旋
回旋の崩れは、術者の座る位置を変えずに、見えにくい部位へ上半身と首をねじって視線を届かせることで起きます。首を左右に回したときに片側だけ動きにくい、首の片側から肩にかけて張るという場合は、回旋の崩れを疑います。
利き手側の肩を上げたまま止める静止
肩を上げたまま止める崩れは、患者さんの口の高さが術者の肘より高いときに、器具を持つ腕を浮かせて処置を続けることで起きます。肩の上側から首の付け根にかけて、利き手側だけこりが強い先生は、この崩れを最初に確かめます。
自分では姿勢の崩れに気づきにくいため、次の方法で確かめると3つのうちどれが大きいかを判断しやすくなります。
- スタッフに頼み、処置中の姿勢を真横と真後ろから撮影してもらう
- 耳の穴が肩の真上から前にどれだけ出ているかを横からの写真で見る
- 後ろからの写真で、左右の肩の高さと首の傾きを比べる
- 1日の診療で、首を回す方向が左右どちらに偏っているかを数える
診療姿勢の対策は術者の姿勢より先にチェアと患者の頭位を決める
歯科医師の首こりを減らす診療姿勢の対策は、術者が背筋を伸ばす努力より先に、術者の椅子、患者さんの口の高さ、患者さんの頭の向きを決めることから始まります。術者が首を曲げずに術野が見える位置へ、患者さん側を合わせる考え方です。
首の角度は術者の首で作らず、チェアと患者の頭位で作ると考えると、診療中に戻る姿勢が決まります。準備の順番は次のとおりです。
- 術者の椅子を、足裏が床につき、股関節が膝よりやや高くなる高さに合わせる
- 患者さんの口が、術者の肘の高さの近くに来るようにチェアを上下させる
- 上顎の処置では患者さんの頭をやや後ろに倒し、下顎の処置では頭を起こし気味にする
- 見えにくい部位は、首を曲げる前に術者の座る位置を時計回りに動かすか、患者さんに顔を左右へ向けてもらう
- 直視で届かない部位は、上半身をねじらずにミラー視へ切り替える
拡大鏡や顕微鏡は、視線の角度が術者の体に合っていれば首の前傾を減らす助けになります。反対に、レンズの傾きが浅い拡大鏡では、倍率が上がった分だけ首を深く曲げて術野をのぞき込むことになるため、購入時や買い替え時には、背筋を伸ばして座った姿勢で視野の中心に術野が入るかを確かめます。
患者さん側の事情で頭位を理想どおりにできない場面もあります。高齢の方や首が曲がりにくい方、体に障害のある方では、水平位で頭を後ろに倒すこと自体が苦しい場合があります。パシフィックサプライ社が掲載した新潟市口腔保健福祉センターの歯科医師による報告には、障害者歯科での水平位診療の課題と、クッションを使って患者さんの姿勢を整える取り組みが紹介されています。患者さんが楽な頭位を先に作り、その頭位に合わせて術者の座る位置と椅子の高さを調整すると、双方の首にかかる無理を減らせます。
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診療の合間は首と逆方向に動かして負担をリセットする
診療の合間にできる首こり対策は、診療中に続けていた前傾とねじれと反対の方向へ、1〜2分だけ体を動かすことです。長いストレッチより、患者さんの入れ替わりごとに短く繰り返すほうが、止まっていた時間を細かく区切れます。
| 動き | やり方 | 狙い |
|---|---|---|
| 顎を引く | 背筋を伸ばして座り、頭を真後ろへ水平に引いて5秒止める。5回 | 前へ出ていた頭を肩の上へ戻す |
| 胸を開く | 両肘を曲げて後ろへ引き、肩甲骨を背骨に寄せて5秒止める。5回 | 丸まっていた背中と肩甲骨を反対に動かす |
| 反対へねじる | 診療中にねじっていた方向と逆へ、上半身をゆっくりねじる | 左右に偏った回旋を戻す |
| 立って歩く | 次の患者さんの準備の間に立ち上がり、数歩歩く | 座り続けた腰と股関節を動かす |
腕や指先にしびれが出る動き、首を後ろへ倒したときに腕へ響く動きは、その場でやめてください。腰の張りが強い先生は、座位と立位の処置を1日の中で入れ替えるだけでも、腰にかかる負担が同じ姿勢に偏りにくくなります。
首こりが戻る歯科医師は胸郭と肩甲骨が固まっている
チェアと頭位を整えても首こりが戻る場合、胸の背骨(胸椎)と肋骨からなる胸郭と、肩甲骨が丸まった位置のまま固まっていることがあります。胸郭が丸まって動かないと、背中から頭を起こす余地が作れず、診療姿勢を整えても最後は首だけで視線の角度を合わせることになるためです。
利き手側の肩甲骨が上がったまま下りなくなるのも、歯科医師に多い固まり方だと見ています。器具を持つ腕を何年も同じ高さで保ってきた結果、肩甲骨を下げる筋肉が働きにくくなり、首の付け根のこりが左右で大きく違ってきます。次の項目に当てはまるかを確かめてください。
- 仰向けに寝ると、後頭部が床から浮く、または枕がないと苦しい
- 両腕を真上に上げると、腕が耳の横まで届かない
- 鏡の前で力を抜くと、利き手側の肩が高い
- 処置に集中しているとき、歯を食いしばっていると気づくことがある
食いしばりは、あごから首の前と横の筋肉まで緊張を広げます。患者さんの噛み合わせと首こりの関係を説明する歯科医院の解説もありますが、術者自身の首こりでは、まず処置中の食いしばりの有無を確かめるほうが先です。精密な処置の最中に上下の歯が当たっていると気づいたら、息を吐きながら歯を離し、舌を上あごにつけるだけでも、あご周りの緊張をいったん抜けます。
とりわけ見落とされがちなのが、診療後のカルテ入力やスマートフォンを見る時間の姿勢です。診療中に前傾していた首を、帰宅するまでさらに同じ角度で使い続ければ、合間のリセットで戻した分はすぐに打ち消されます。

腕や指先にしびれがある首こりは整形外科を先に受診する
首こりに次のような症状が加わるときは、セルフケアや整体より先に整形外科を受診してください。首の骨の間から出る神経や脊髄が圧迫されている状態は、画像検査をしなければ見分けられず、放置すると手の細かい動きに影響が残ることがあるためです。
- 首から腕、指先にかけてしびれや痛みが走る
- 握力が落ちた、細い器具を持ちにくい、指先の感覚が鈍い
- 首を後ろに倒すと腕に痛みやしびれが響く
- 両手がしびれる、足がもつれて歩きにくい
- これまでにない激しい頭痛、発熱を伴う首の痛み
- 転倒や交通事故の後から首が痛む
手指の感覚と巧緻性は、歯科医師にとって診療そのものに直結します。しびれを首こりの延長と考えて様子を見るのではなく、医師の評価を受けてから、仕事中の姿勢や施術の相談に進む順番をおすすめします。CUREPROは、事故や転倒などのけがによる痛みを施術の対象としていません。
歯科医師の首こりについてよくある質問
歯科医師の首こりと診療姿勢について、よく寄せられる質問に答えます。
拡大鏡を使えば首こりは減りますか
視線の角度が体に合っていれば、首の前傾を減らす助けになります。レンズの傾きが浅い拡大鏡や、作業距離が合っていない拡大鏡では、かえって首を深く曲げてのぞき込むことになるため、背筋を伸ばした姿勢で術野が見えるかを基準に選びます。
歯科医師の腰痛も同じ対策でよいですか
椅子の高さと患者さんの口の高さを合わせる部分は共通です。腰痛の場合はそれに加えて、座面に深く座って骨盤を立てることと、座位と立位を1日の中で入れ替えることが対策の中心になります。
治療中に患者さんが首が痛いと言うときはどうすればいいですか
頭位を患者さんが楽な角度まで戻し、術者の座る位置で見え方を補います。首の下にタオルやクッションを入れる、長い処置の途中で一度チェアを起こして首を休めてもらうといった調整も、患者さんの首への負担を減らします。
噛み合わせを整えれば首こりは治りますか
噛み合わせだけで首こりが解消するとは限りません。噛み合わせとの関係を説明する解説はありますが、歯科医師の首こりでは、長時間の前傾やねじれといった診療姿勢の影響を先に見直すほうが、変化を確かめやすいと考えています。
マッサージで楽になるならそれで十分ですか
楽になるなら続けて構いません。ただ、翌日の診療で同じ前傾とねじれを繰り返せば、首の張りは同じように戻ります。マッサージで楽になっている期間に、チェアと頭位の決め方を変えておくと、張りが戻るまでの期間を延ばせます。
まとめ|歯科医師の首こりは首ではなくチェアと患者の頭位で角度を作る
歯科医師の首こりは、頭を前に傾けたまま止まる時間の長さで起きやすく、首や肩の慢性的な痛みを東京・埼玉・千葉の10院で見てきたCUREPROとしては、見直しの順番を次のように考えています。
- 術者の椅子と患者さんの口の高さ、頭位を先に決め、首を曲げずに見える位置を作る
- 患者さんの入れ替わりごとに、前傾とねじれの反対方向へ1〜2分動かす
- それでも戻る首こりは、胸郭と肩甲骨の固まりと食いしばりを確かめる
腕や指先のしびれ、握力の低下を伴う首こりは、どの対策よりも先に整形外科を受診してください。診療姿勢の組み立ては、今日の午後の診療からでも変えられます。
診療後の首こりが翌朝まで残る先生はCUREPROで姿勢の癖から相談できます
チェアの高さも合間のリセットも試したのに、翌朝まで首の重さが抜けない先生は、胸郭や肩甲骨が丸まった位置で固まり、首だけで角度を作る癖が残っているのかもしれません。CUREPROは保険を使わない完全自費の整体院で、首や肩、背中の慢性的な痛みを東京・埼玉・千葉の10院で施術しています。
ご来院の際に次の4つを教えていただけると、診療のどの姿勢が首に響いているのかを初回から一緒に絞り込めます。
- 利き手と、主に座る時計の位置
- 1日の診療時間と、長い処置が多い曜日
- 拡大鏡や顕微鏡を使っているか
- 腕や指先のしびれがあるか、医療機関を受診したことがあるか
しびれや握力の低下がある場合は医療機関での診察を先にお願いしています。そのうえで、診療を続けながら首の負担を減らしたい先生の相談をお待ちしています。
運営者情報
本記事は、株式会社May-Plus(代表取締役・阿部純治、柔道整復師)が運営するCUREPROのオウンドメディア編集部が作成しました。CUREPROは東京都・埼玉県・千葉県で10院を展開する、保険を使わない完全自費の整体院です。本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、医師による診断や治療に代わるものではありません。
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監修者プロフィール:阿部純治(柔道整復師)

