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コラム

産後の腱鞘炎と抱っこの負担
手首を守る持ち方と家族での分担

産後の腱鞘炎と抱っこの負担|手首を守る持ち方と家族での分担

▼この記事の監修者

CUREPRO代表 阿部純治 柔道整復師

阿部純治(あべ じゅんじ)

柔道整復師(国家資格)/CUREPROグループ代表

中央医療学園専門学校(現:日本総合医療専門学校)卒業。整形外科クリニック・大手整骨院グループ等での勤務経験を経て、2011年創業。施術歴20年、延べ5万人以上の施術実績。骨盤と下半身の構造改善を得意とする。

「抱っこするたびに親指の付け根がズキッとする。でも抱っこをやめるわけにいかない」。産後の腱鞘炎でご相談に来られる方が、ほぼ全員そうおっしゃいます。調べれば安静にと書いてある。けれど赤ちゃんは待ってくれません。

育児中の手の痛みを見てきた立場から申し上げると、この状況で必要なのは安静ではありません。同じ動作を、別の場所と別の人に振り分けることです。手首を休ませる現実的な方法は、休むことではなく担当を替えることだと考えています。

CUREPRO監修者 阿部純治 柔道整復師

阿部純治

「産後の腱鞘炎と抱っこの負担」を考えるときは、一つの部位だけでなく、姿勢や日常動作のつながりまで確認することが大切です。

本記事では、産後の腱鞘炎と抱っこの関係を、負担が集まる仕組みから持ち方の具体的な変更、家族との分担、いつ楽になるのかの見通しまで、施術者の視点で順を追ってお伝えします。

この記事でわかること

  • 産後に腱鞘炎が起きやすい理由と、抱っこで負担が集まる仕組み
  • 手首を反らせない抱き方と授乳姿勢への変え方
  • 家族と育児動作を分担する具体的な割り振り
  • いつ楽になるのかの見通しと、整形外科へ相談する目安

産後の腱鞘炎で必要なのは安静ではなく担当の分担である

産後の腱鞘炎で抱っこの負担を家族と分担する様子

結論から申し上げます。育児中の手首の痛みは、休ませようとするほど行き詰まるのです。減らすべきは使用時間ではなく、一か所に集まっている負担の割合です。

まず前提を確認しておきましょう。日本整形外科学会のドケルバン病の解説では、この状態が妊娠出産期の女性や更年期の女性に多く生じると説明されています。手首の親指側が痛んで腫れ、親指を広げたり動かしたりすると強い痛みが走るのが特徴です。

つまり、産後に手首を痛める方が多いのは、使いすぎだけが理由ではありません。時期そのものが影響しているとされています。だからこそ、根性で乗り切る対象ではないのです。

なぜ産後に集中するのか。抱っこという新しい動作が急に始まることに加えて、この時期は手がむくみやすく、睡眠もまとまって取れません。腱と腱鞘のこすれが増える一方で、回復にあてる時間は減ります。しかも赤ちゃんの体重は毎月増えていきます。負担は減るどころか、日ごとに大きくなっていく構図です。

取り組む順番 内容
①支える場所を変える 手のひらと手首から、前腕と体幹へ
②手首の角度を変える 反らせた状態で固定しない
③道具に置き換える 抱っこひも、授乳クッション、台の高さ
④人に振り分ける 家族が代われる動作を先に決めておく
⑤専門家に相談する 腫れや熱感、力が入らないときは受診を優先

抱っこで痛むのは手首ではなくどこで支えているかで決まる

赤ちゃんを前腕と体幹で支えて手首を反らさない抱き方

ここで、比較記事ではあまり語られない部分をお伝えします。同じ体重の赤ちゃんを抱いても、痛む人と痛まない人がいます。違いは腕力ではなく、支えている場所です。

手のひらと手首だけで支えると、赤ちゃんの重さは親指の付け根と手首の親指側に集中します。しかも抱っこの姿勢は、手首を後ろへ反らせ、親指を大きく広げた形になりがちです。数キロの重さを、いちばん細い部分で、いちばん不利な角度で支え続けている状態だと言えます。

一方、前腕の内側と肘のあたりに赤ちゃんを載せ、体幹に寄せて支えると、手首は添えるだけで済みます。腕の太い部分と体の中心が仕事を引き受けるためです。

育児の動作 負担が集まりやすい形 変えたい点
横抱き 手のひらで頭を支え、手首が反る 前腕の内側に頭を載せる
縦抱き 脇の下を親指と人差し指でつかむ 手のひら全体とお尻を面で支える
授乳 腕だけで赤ちゃんの高さを保つ クッションと台で高さを作る
抱き上げ 脇に手を差し込み手首を反らせて持ち上げる 体を近づけてから両前腕ですくう

手首まわりの痛みの見分け方については、親指側の手首が痛い原因で整理しています。親指の付け根そのものが痛む場合は、親指の付け根が痛む原因もあわせてご覧ください。

手首を反らせない持ち方に変える

手のひら中心から前腕中心の抱き方へ変える手順

ここまでの整理を、日々の動作に落とし込みます。今日から変えられるものばかりです。

横抱きは前腕の内側に頭を載せる

手のひらで後頭部を支えると、手首は自然と反ります。かわりに、肘の内側から前腕にかけての面に頭を載せてください。手は赤ちゃんの背中に軽く添えるだけです。慣れないうちは不安に感じますが、支える面積は手のひらより広くなります。

CUREPRO監修者 阿部純治 柔道整復師

阿部純治

セルフチェックは状態を知るための目安です。結果だけで原因を断定せず、左右差や症状の出方も合わせて見てください。

縦抱きは親指を広げずに面で支える

縦抱きで脇の下を親指と人差し指ではさむ持ち方は、親指の付け根に力が集中します。手のひら全体を赤ちゃんの背中に当て、お尻はもう一方の前腕で受けてください。親指は握り込まず、他の指と同じ方向にそろえておきます。

授乳は腕ではなく高さで支える

授乳中に腕だけで赤ちゃんの位置を保つと、10分でも20分でも同じ角度が続きます。クッションを重ねて高さを作り、腕は添えるだけの状態にしてください。座面が低い椅子では前かがみになりやすいため、足元に台を置いて膝の高さを上げると姿勢が安定します。

沐浴とおむつ替えは台の高さを見直す

沐浴は前かがみで手首を反らせる時間が長い動作です。ベビーバスの位置を高くする、洗面台を使うなど、腰と手首の両方が楽になる高さを探してください。おむつ替えも同様で、床で行うより台のほうが手首の角度は浅く済みます。

抱っこひもは座って装着する

抱っこひもは抱えている時間の負担を大きく減らせる道具ですが、着脱の場面で痛める方が少なくありません。立ったまま片手で赤ちゃんを支えながら金具を操作すると、手首をひねる力が加わります。座って赤ちゃんを膝に載せてから装着し、金具の操作は痛くないほうの手で行ってください。肩ベルトの長さが合っていないと赤ちゃんが体から離れ、結局は腕で支える時間が増えます。

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セルフケアは時期によって冷やすか温めるかを分ける

産後の手首を休めながら冷却ケアを行う様子

セルフケアの方向は、痛みの状態で変わります。

ズキズキする痛みがあり、押すと熱を持っている時期は冷やすほうが向いています。保冷剤を薄い布で包み、5分から10分ほど当ててください。長時間当て続ける必要はありません。

一方、動かし始めがこわばる、鈍い張りが続くという段階では、温めて前腕をゆるめるほうが楽になる方が多いところです。入浴中に前腕を軽くさすっておくだけでも違います。

サポーターについても触れておきます。親指まで固定できるタイプは、動かさない時間を作れる点で有効です。ただし、着けたまま無理に使い続けると気づかないうちに負担が積み上がります。サポーターは痛みを消す道具ではなく、動きを制限して休ませるための道具だと考えてください。夜間や家事の時間だけ着ける、といった使い分けが現実的です。

加えて、前腕そのものをゆるめておくと手首は楽になります。親指を動かす筋肉は手首ではなく前腕から始まっているためです。肘の少し下、親指側のふくらみを反対の手で軽くつまみ、30秒ほどゆらしてください。強く押し込む必要はありません。

ストレッチは、痛みの出ない範囲にとどめます。手のひらを上に向けて肘を伸ばし、反対の手で指先を軽く手前へ引く。20秒ほどで構いません。強く伸ばすほど効くわけではないという点は、押さえておきましょう。

家族と育児動作を分担する割り振り方

抱っこひもの装着を家族で分担して手首を休める様子

ここで本音を申し上げます。持ち方を変え、セルフケアを続けても、担当の総量が変わらなければ限界があります。

手伝ってほしいと伝えても伝わりにくいのは、頼み方が動作単位になっていないからだと感じています。手首に負担の大きい動作を名指しで渡すほうが、代わってもらいやすいものです。

  • 抱き上げと寝かしつけの抱っこ。重さを支える時間が長い動作から渡す
  • 沐浴。前かがみと手首の反りが重なる動作
  • 抱っこひもの着脱。装着時に手首をひねる場面が多い
  • 買い物袋やベビーカーの持ち運び。育児以外で手首を使う場面
  • 夜間の対応。休ませる時間をまとめて確保する

伝え方も工夫できます。つらいから手伝ってほしいではなく、寝かしつけの抱っこを毎晩お願いしたい、と時間と動作を指定して頼んでください。相手にとっても、何をどれだけやればよいかが分かるほうが動きやすいはずです。

ワンオペで頼れる相手がいない場合もあります。その場合は、道具に振り分けてください。抱っこひもを室内でも使う、電動のバウンサーやハイローチェアを検討する、宅配や家事代行で手を使う時間そのものを減らす。人でなくても、担当は渡せます。

いつ楽になるのかは使う量が減るかどうかで決まる

手首を反らさず赤ちゃんを体に寄せて抱く産後の母親

とりわけ多くいただくのが、いつまで続くのかという質問です。

CUREPRO監修者 阿部純治 柔道整復師

阿部純治

ストレッチや運動は、痛みが増えない範囲で少しずつ続けましょう。強い違和感がある場合は中止してください。

正直にお伝えすると、期間は使用量に左右されます。子育ての現場で回数を減らせないのであれば、変わるのは持ち方と分担の部分だけです。抱っこの回数と重さが変わらないまま数週間過ごしても、大きな変化は出にくいところです。逆に、持ち方を変えて分担が進むと、2週間から1か月ほどで違いを感じる方が多いと見ています。

そして、子どもが歩き始めて抱っこの時間が減ると、自然に軽くなっていく例も少なくありません。ただし、時間が解決すると考えて放置した結果、注射や手術を検討する段階まで進む方もいらっしゃいます。待つことと放置することは違います。

CUREPRO監修者 阿部純治 柔道整復師

阿部純治

産後の手首のご相談では、必ず抱っこを実演していただきます。言葉で聞くより、その場で見たほうが早いためです。多くの方は手首を反らせて親指を開いた形で支えていて、持ち方を前腕中心に変えるだけで、その場で痛みが軽くなる方がいらっしゃいます。もう一つお伝えしているのが、手首だけを見ていても足りないということです。抱っこは肩と背中で赤ちゃんの重さを受けとめる動作でもあります。授乳の姿勢で背中が丸まったままだと、腕が体から離れた位置で支えることになり、手首の負担は増えます。当院では前腕と手首に加えて、肩甲骨と胸まわりの動きも一緒に確認しています。肩や首のつらさが重なっている方は、肩こりの原因と解消法もあわせてご覧ください。

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整形外科へ相談する目安をはっきりさせておく

産後の手首の痛みを整形外科で相談する様子

痛む場所を確かめる手がかりもあります。先ほどのドケルバン病の解説では、親指を握り込んだ状態で手首を小指側へ曲げると痛みがいっそう強くなることが、診断の手がかりとして挙げられています。この動きで手首の親指側に強い痛みが走る場合は、腱鞘炎の可能性を念頭に置いてください。ただし、これは目安であって診断ではありません。

線引きははっきりさせておきましょう。次のような状態があるときは、セルフケアより受診を優先してください。

  • 手首や親指の付け根が明らかに腫れている。赤みや熱感がある
  • 指がしびれる。感覚が鈍い
  • 力が入らず、物を落とすことが増えた
  • ぶつけた、ひねったあとから痛みが続いている
  • 発熱を伴っている
  • ペットボトルの蓋が開けられないなど、日常動作が難しい
  • 2週間から4週間セルフケアを続けても変化がない

先ほどのドケルバン病の解説でも、保存的な対応で改善しない場合には腱鞘を開く手術が行われると説明されています。早い段階であれば、選べる対応の幅も広くなります。授乳中の方は薬の使用について確認事項があるため、その旨を伝えたうえでご相談ください。

産後の腱鞘炎と抱っこについてよくある質問

手首に負担の少ない抱き方を専門家へ質問する夫婦

整体で腱鞘炎はよくなりますか

整体でできるのは、腱鞘そのものへの処置ではありません。前腕や肩まわりの緊張をゆるめ、負担のかかりにくい使い方に変えていく部分です。腫れや熱感が強い時期は、まず医療機関でご相談ください。

抱っこひもを使えば手首は楽になりますか

抱えている時間の負担は減ります。ただし着脱のときに手首をひねる場面が多く、そこで痛める方もいます。装着は座って行い、金具の操作は痛くないほうの手を使ってください。

湿布を貼っても大丈夫ですか

授乳中は成分によって確認が必要な場合があります。市販薬を使う前に、薬剤師や医師にご相談ください。

片手だけ痛いのはなぜですか

抱っこや授乳の向きが決まっていると、同じ側にばかり負担が集まります。左右を入れ替えて抱く習慣をつくると、片側への集中は減らせます。手首全般の痛みについては手首が痛い原因で整理しています。

妊娠中から痛みがあったのですが関係しますか

妊娠中から手のこわばりや痛みが出る方もいらっしゃるでしょう。産後に急に始まったわけではないなら、この時期特有の変化が背景にあるのかもしれません。いずれにしても抱っこが始まると負担は増えるため、早めに持ち方を整えておくほうが楽です。

産後の骨盤ケアと一緒に相談できますか

できます。抱っこの姿勢は骨盤と背中の状態にも左右されるため、同時に見ていくほうが効率的です。産後の骨盤ケアの考え方もあわせてご覧ください。

まとめ|産後の腱鞘炎は抱っこの持ち方と分担で負担を減らす

産後の腱鞘炎で最初に変えるのは、抱っこをやめることではありません。支える場所を手のひらから前腕と体幹へ移し、手首を反らせない角度にする。授乳と沐浴は高さで支える。この3つが土台です。

そのうえで、負担の大きい動作を名指しで家族に渡してください。頼れる相手がいなければ、道具に渡す方法があります。育児を止めずに負担だけを減らす道は残されています。

そして、腫れや熱感、しびれ、力の入りにくさ、日常動作の困難があるときは、整形外科へご相談ください。待つことと放置することは違います。

CUREPROは完全自費で、痛む場所だけでなく体全体のつながりから構造を整える整体院です。産後の手首のご相談では、実際の抱っこを見せていただいたうえで、前腕と手首、肩甲骨と胸まわりの動きを確認し、持ち方の変更とセルフケアの優先順位をお伝えしています。抱っこを減らせない毎日だからこそ、支え方から変えてみてください。東京・埼玉・千葉の10院でお待ちしています。

この記事の監修者

CUREPRO代表 阿部純治 柔道整復師

阿部純治(あべ じゅんじ)

柔道整復師(国家資格)/CUREPROグループ代表

中央医療学園専門学校(現:日本総合医療専門学校)卒業。整形外科クリニック・大手整骨院グループ等での勤務経験を経て、2011年創業。施術歴20年、延べ5万人以上の施術実績。骨盤と下半身の構造改善を得意とする。

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